ベトナムの絶品フォーの作り方|本場の味を家庭で再現!
ベトナム料理を代表する国民食、フォー(Pho)。あの優しいけれど奥深いスープ、つるりとした米麺、そして爽やかな香草の組み合わせは、一度食べると忘れられない魅力があります。外食で楽しむのも良いですが、「あの本場の味を家庭でも再現できたら…」そう思ったことはありませんか?
この記事では、そんなあなたの願いを叶えるべく、ベトナムの家庭や食堂で受け継がれる伝統的なフォーの作り方を、分かりやすく丁寧にご紹介します。複雑に思えるかもしれませんが、いくつかのポイントを押さえれば、驚くほど本格的な『ベトナムの絶品フォー』を自宅で作ることが可能です。今回は、特に定番である牛肉のフォー(Pho Bo)を中心に解説しますが、基本のスープは鶏肉のフォー(Pho Ga)にも応用できます。
自宅で手作りするフォーは、材料や調味料を自分の好みに合わせて調整できるのも大きな魅力。また、米麺を使用するため、自然とグルテンフリー料理としても楽しめます。ヘルシーでありながら栄養満点、心も体も満たされる一品。ぜひ、この記事を参考に、本場の味を家庭で再現してみてください。
フォーとは?その魅力と歴史
フォーは、平たい米粉麺に、様々な具材を乗せ、じっくり煮込んだあっさりとしたスープをかけたベトナムの麺料理です。その歴史は比較的新しく、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ハノイを中心に誕生したと言われています。フランスの植民地時代に牛肉が普及し、中国の麺文化とベトナムの食文化が融合して生まれたという説が有力です。
フォーの最大の魅力は、何と言ってもそのスープにあります。牛骨や鶏ガラ、そしてシナモン、スターアニス、クローブ、カルダモンといったスパイス、さらに炙った生姜や玉ねぎを加えて、長時間煮込むことで生まれる、透明で深みのある出汁。この複雑でありながらも澄んだ味わいが、フォーを唯一無二の存在にしています。
ベトナムでは朝食として食べられることが一般的ですが、ランチや夕食、軽食としても一年中楽しまれています。地域によってもスタイルが異なり、例えば北部のハノイではあっさりとした上品なスープが特徴的ですが、南部のホーチミンなどでは甘みが強く、たくさんの種類の香草やもやしを添えて食べることが多いです。今回ご紹介するのは、これらの特徴を組み合わせ、日本の家庭でも作りやすいようにアレンジした、本格的なレシピです。
本場の味を再現するための鍵は「スープ」
フォーの美味しさの9割はスープで決まると言っても過言ではありません。本場の味に近づけるためには、このスープ作りが最も重要です。単に材料を煮込むだけでなく、いくつかの工程を丁寧に行うことが、あの透明で香り高いスープを生み出す秘訣です。
本格スープのためのポイント
- 骨の下処理: 牛骨や鶏ガラを使う場合、臭みやアクを取り除くための下茹で(霜降り)は必須です。
- 香味野菜とスパイスの炙り: 生姜、玉ねぎ、そしてフォーに欠かせないスパイス(シナモン、スターアニス、クローブ、カルダモンなど)をしっかりと炙ることで、香りが引き立ち、スープに深みと香ばしさが加わります。
- 長時間煮込み: 骨や香味野菜、スパイスから旨味を最大限に引き出すためには、最低でも3〜4時間、できればそれ以上の時間かけてじっくりと煮込むことが理想です。圧力鍋を使えば時間を短縮することも可能です。
- 丁寧なアク取りと脂取り: 煮込み中に出てくるアクや浮かんできた脂をこまめに取り除くことで、スープが澄んで雑味のない仕上がりになります。
- ヌクマム(魚醤)の活用: ベトナム料理に欠かせない調味料であるヌクマムは、フォーのスープの味の決め手となります。独特の旨味と香りが、本格的な風味を与えてくれます。ヌクマム(魚醤)について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
これらの工程を丁寧に行うことで、市販の素では決して味わえない、深みと複雑さを持ったスープが生まれます。
家庭で再現!絶品フォーの作り方(牛肉のフォー)
さあ、いよいよ具体的なレシピです。ここでは牛肉を使った本格的なフォーの作り方をご紹介します。材料を揃えて、じっくりと挑戦してみましょう。
材料(4人分)
スープ用
- 牛骨(ゲンコツ、テールなど): 1kg
- 牛すじ肉 または 牛塊肉(煮込み用): 300-400g
- 玉ねぎ: 1個
- 生姜: 1かけ(約50g)
- スパイスセット(シナモンスティック 1本、スターアニス 3-4個、クローブ 小さじ1/2、ブラックカルダモン 1個 - なければグリーンカルダモン 3-4個)
- 水: 3-4リットル
- ヌクマム(ベトナム魚醤): 大さじ3-4
- 砂糖: 大さじ1-2 (ベトナムの黒砂糖やきび砂糖がおすすめ)
- 塩: 少々
具材用
- フォー用乾麺(または生麺): 300-400g
- 牛肉(薄切り、しゃぶしゃぶ用など、食べる直前に入れるもの): 200-300g
- 玉ねぎ: 1/2個(薄切り)
- 青ネギまたはパクチー: 適量(小口切り)
- もやし: 1袋
トッピング・薬味
- パクチー、ミント、バジルなどの香草: たっぷり
- ライムまたはレモン: 1-2個(くし切り)
- 唐辛子(生または乾燥): お好みで
- チリソース、ホイシンソース: お好みで
- 揚げエシャロット(フライドオニオン): お好みで

作り方
- 牛骨の下処理: 牛骨は流水でよく洗い、大きければ適当な大きさに割る。鍋に牛骨がかぶるくらいの水を入れて火にかけ、沸騰したら5-10分煮てアクと汚れを出す(霜降り)。一旦火を止め、骨をざるにあげて流水でよく洗い、鍋もきれいに洗う。
- 香味野菜とスパイスを炙る: 玉ねぎは皮ごと半分に切る。生姜は皮付きのまま厚めにスライスする。フライパンまたは魚焼きグリルで、玉ねぎ、生姜、スパイスを弱火で香ばしくなるまでじっくり炙る。スパイスは焦がさないように注意。香りが立ってきたら取り出す。
- スープを煮込む: きれいに洗った鍋に下処理済みの牛骨、炙った玉ねぎと生姜、スパイス、牛すじ肉または塊肉、分量の水を入れる。強火にかけて沸騰したらアクを丁寧に取り除く。弱火にし、蓋を少しずらして、最低でも3〜4時間、可能であれば5〜6時間煮込む。途中、水分が減ったら差し湯をする。
- スープを仕上げる: 牛すじ肉または塊肉が柔らかくなったら取り出す。スープを目の細かいざるやキッチンペーパーを敷いたざるなどで濾す。濾したスープを鍋に戻し、ヌクマム、砂糖、塩で味を調える。味見をしながら、好みのバランスに調整する。牛すじ肉は薄切りにしておく。
- 具材と麺の準備: 薄切り牛肉は食べる直前に使えるよう準備する。玉ねぎは薄切りにして水にさらして辛味を抜く。青ネギ/パクチーは小口切り。もやしは洗っておく。フォー麺はパッケージの表示通りに茹でる。乾麺の場合は、ぬるま湯に30分〜1時間ほど浸けてから茹でると早く火が通る。生麺の場合はそのまま茹でる。茹で上がったら冷水にとってぬめりを取り、しっかり水気を切る。
- 盛り付け: 温めた丼に水気を切ったフォー麺を入れる。その上に牛すじ肉、薄切り牛肉(しゃぶしゃぶ用などを使う場合は、熱々のスープをかけることで火を通す)、玉ねぎの薄切り、もやし、青ネギ/パクチーを乗せる。
- スープを注ぐ: 沸騰直前まで温めた熱々のスープを、具材の上からたっぷりと注ぎ入れる。
- 完成と実食: お好みでパクチーやミントなどの香草、ライムのくし切り、唐辛子、チリソース、ホイシンソースなどを添えて完成。ライムを絞ったり、香草をちぎりながら、味の変化を楽しみながらいただく。


本場の味に近づけるための追加のコツ
上記の基本的なレシピで十分美味しいフォーができますが、さらに本場の味に近づけるための、いくつかの追加のコツをご紹介します。
- 良質な骨を使う: 新鮮で、骨髄が詰まった牛骨(ゲンコツやテール)を使うと、よりコクと深みのあるスープになります。鶏ガラを少量加えるのも良いでしょう。
- スパイスのバランス: スパイスの量はあくまで目安です。メーカーや種類によって香りの強さが異なりますので、少量から試して調整してください。また、スパイスは煎ることで香りが立ちますが、焦がすと苦みが出るので注意が必要です。
- 香味野菜はしっかり炙る: 玉ねぎや生姜は、表面が真っ黒になるくらいしっかりと炙ることで、香ばしさが増し、独特の風味が出ます。ただし、炭化させすぎると苦みが出る場合もあるので加減が必要です。
- 味の調整: スープの味はヌクマムと砂糖、塩で調整します。ヌクマムは独特の風味と旨味を加える重要な調味料ですが、入れすぎると魚臭さが強くなることも。少しずつ加えて味見をしてください。本場の味は、塩味だけでなくほんのりとした甘みがあるのが特徴です。
- 牛肉の種類: 食べる直前に入れる薄切り肉は、サシが入りすぎているものよりも、赤身の美味しい部位(例えばモモ肉など)を薄切りにしたものがおすすめです。熱々のスープでサッと火が通るくらいの厚さが理想です。
- 香草はケチらない: フォーは香草をたっぷり使うことで真価を発揮します。パクチーだけでなく、ミントやバジル、ノコギリコリアンダーなどが手に入れば、ぜひ数種類組み合わせて使ってみてください。
- 薬味で変化を楽しむ: ライムを絞る、唐辛子ペーストを加える、チリソースやホイシンソースを使うなど、途中で味の変化を楽しむのがベトナム流です。
フォーの種類とアレンジ
今回は牛肉のフォー(Pho Bo)のレシピをご紹介しましたが、フォーには様々な種類があります。
- 鶏肉のフォー(Pho Ga): 牛骨の代わりに鶏ガラを使って作るフォーです。あっさりとしていながらも、鶏の優しい旨味が特徴です。香味野菜やスパイスは牛の時と同様に使いますが、より繊細な風味になります。
- 混ぜフォー(Pho Tron): スープをかけずに、麺と具材、タレを混ぜていただくスタイルです。甘酸っぱいタレを使うことが多く、暑い季節にもさっぱりと食べられます。
- 炒めフォー(Pho Xao): 平たい米麺を肉や野菜と一緒に炒めた料理です。香ばしさとプリプリの麺の食感が楽しめます。
スープのレシピをマスターすれば、具材を変えたり、アレンジを加えたりして、様々なフォーのバリエーションを楽しむことができます。また、米麺を使う『ベトナムのフォー』は、基本的にグルテンフリー料理なので、小麦アレルギーの方やグルテン摂取を控えている方にもおすすめです。動物性の材料を使わずに、キノコや野菜、大豆製品などで出汁を取れば、ヴィーガンフォーも作れます。
フォーと健康的なライフスタイル
フォーは、スープ、麺、肉、そしてたっぷりの野菜や香草がバランス良く含まれており、比較的ヘルシーレシピと言えます。
- 低脂肪・高タンパク: 澄んだスープは脂質が少なく、肉は良質なタンパク源となります。
- 豊富な野菜と香草: 添えられるもやしや玉ねぎ、そしてたくさんの香草からは、ビタミンやミネラル、食物繊維を摂取できます。特に香草類はデトックス効果や消化促進効果が期待できるものも多く、健康的なライフスタイルを送る上で積極的に取り入れたい食材です。
- グルテンフリー: 米麺を使用するため、グルテンを気にせずに安心して食べられます。
ただし、美味しいからといってスープを全部飲み干してしまうと、塩分を摂りすぎる可能性もあります。具材をしっかりと食べ、スープは適量にするなど、バランスを意識すると良いでしょう。家庭で作る場合は、塩分や糖分の量を自分で調整できるのも大きなメリットです。
まとめ:家庭で叶える本場の味
ベトナムの国民食であり、世界中で愛される『ベトナムのフォー』。あの奥深い味わいは、じっくり時間をかけて作るスープに秘密がありました。牛骨や香味野菜を丁寧に下処理し、スパイスと共に長時間煮込む。そして、ヌクマムで味を調える。この工程一つ一つに、本場の味を家庭で再現するための鍵が隠されています。
最初は少し手間に感じるかもしれませんが、時間をかけて作ったスープからは、格別の美味しさと香りが生まれます。家族や友人に振る舞えば、きっとその本格的な味に驚かれるはずです。また、自分の手で一から作ることで、『アジア料理』であるフォーの文化や奥深さをより深く感じられるでしょう。
この記事でご紹介したレシピは、あくまで基本です。お好みのスパイスの量を調整したり、手に入りやすい材料で代用したり、自分だけの『ベトナムの絶品フォー』を追求するのも楽しいでしょう。伝統料理であるフォーを、ぜひあなたの家庭の味として育ててみてください。
さあ、今週末はキッチンに立って、ベトナム旅行気分を味わってみませんか?このレシピが、あなたの食卓に温かい感動と笑顔を運んでくれることを願っています。