冷やしおでん|夏でも楽しめる出汁の味わい
日本の冬の風物詩として親しまれているおでん。熱々の出汁に浸かった大根や玉子、練り物が心と体を温めてくれます。しかし、このおでんを「夏」に楽しむ、それも「冷やして」味わうという、ちょっぴり意外な提案があるのをご存1をご存知でしょうか?「冷やしおでん」は、伝統的な和食の枠を超え、夏の暑さの中でもさっぱりと美味しく、そしてヘルシーに楽しめる新しいスタイルのおでんです。今回は、この冷やしおでんの魅力に迫り、ご家庭で簡単に作れる方法や、夏ならではの楽しみ方をご紹介します。この簡単な食事で、夏の食卓に新しい風を吹き込みましょう。
冷やしおでんとは? 冬のおでんとの違い
おでんといえば、体を芯から温める温かい鍋料理。それがなぜ冷やしおでんになるのでしょうか? 冷やしおでんは、文字通りおでんを冷やして提供する料理ですが、単に冷ますだけでなく、夏に合うように工夫が凝らされています。冬のおでんが濃厚で深みのある出汁でじっくり煮込むのに対し、冷やしおでんの要となるのは、より繊細でクリアな出汁の味わいです。昆布やかつお節で丁寧に取った出汁を使い、醤油やみりんの量を控えめにしたり、塩分を調整したりすることで、冷やしても風味が際立つように仕上げます。また、具材も冬の定番に加え、夏野菜を取り入れたり、さっぱりとしたものが選ばれる傾向があります。
最大の大きな違いは、その温度と提供方法です。冬のおでんは卓上コンロなどで温めながら食べますが、冷やしおでんは冷蔵庫でしっかりと冷やしてから器に盛り付けます。冷やすことで出汁の脂肪分が固まりやすくなるため、冷やしおでんの出汁は、冬のおでんのそれに比べて油分が少なく、より澄んでいることが多いです。この違いが、夏の暑い日でも重たく感じさせない、爽やかな口当たりを生み出します。
なぜ夏に冷やしおでん? その魅力とは
夏の食欲不振や疲労は多くの人が経験することです。そんな時に冷やしおでんがおすすめです。その魅力は多岐にわたります。
- 圧倒的な清涼感: キンと冷えた出汁が、夏の暑さで火照った体を内側からクールダウンさせてくれます。食欲がない時でも、つるりとした口当たりと冷たい喉越しで食べやすいのが特長です。
- 出汁の繊細な味わい: 温かいと飛んでしまいがちな出汁の香りは、冷やすことでより一層引き締まり、繊細な旨味をダイレクトに感じることができます。昆布やかつお節、具材から溶け出した出汁の妙を存分に楽しめます。これはまさに和食の真髄とも言えるでしょう。
- ヘルシーで栄養満点: 冷やしおでんは、基本的に低カロリーで消化の良い具材が中心です。大根やこんにゃく、昆布などは食物繊維が豊富。玉子やはんぺんは良質なたんぱく源になります。また、夏バテで不足しがちな水分やミネラルを出汁から補給できるのも嬉しいポイントです。ヘルシーレシピを探している方にとって、非常に優れた選択肢となります。
- 調理のしやすさ: 一度作ってしまえば冷蔵庫で保存でき、食べたい時にすぐ取り出せるのも冷やしおでんの利点です。煮込み時間は必要ですが、その後の手間がかからないため、簡単な食事として重宝します。特に、暑い中で長時間キッチンに立ちたくない日にはぴったりです。
- 彩りの豊かさ: 夏野菜などを取り入れることで、見た目にも鮮やかになります。食欲をそそる彩りは、夏の食卓をより一層楽しいものにしてくれます。
これらの点から、冷やしおでんは夏の新たな定番として、食卓を豊かに彩ってくれる可能性を秘めています。伝統料理であるおでんが、形を変えて夏の暑さを乗り切る知恵となるのです。

冷やしおでんの要! 夏にぴったりの出汁の作り方
冷やしおでんの美味しさは、何と言っても出汁で決まります。冬のおでんよりもクリアで、冷やしても風味が損なわれない、繊細な旨味を持つ出汁を目指しましょう。基本的な出汁の取り方と、冷やしおでん向けのアレンジをご紹介します。
基本の昆布とかつお節の合わせ出汁
最も一般的で、冷やしおでんに適した出汁です。上質な昆布とかつお節を使うことで、雑味のない澄んだ出汁が取れます。
材料:
- 水:1.5リットル
- 昆布:10g程度(できれば真昆布や羅臼昆布など、質の良いもの)
- かつお枯れ節(またはかつお節):15g程度
作り方:
- 鍋に水と昆布を入れ、30分~1時間ほど浸けておきます(時間があれば一晩でも)。
- 鍋を弱火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出します。昆布を入れっぱなしにすると粘りや臭みが出ることがあります。
- 火を止め、かつお節を加えます。
- かつお節が沈んだら、キッチンペーパーなどを敷いたザルでゆっくりと漉します。かつお節を絞ったり揺らしたりすると濁りの原因になるので、自然に落ちるのを待ちましょう。
- 澄んだ出汁が取れたら、これをベースにおでんの味付けをします。
出汁の詳しい情報については、Wikipediaの出汁のページも参考にしてみてください。
冷やしおでん向けのアレンジ
基本の出汁に加えて、冷やしおでん用に以下の点を調整します。
- 薄味に仕上げる: 温かいおでんよりも醤油やみりんの量を減らし、塩分も控えめにします。冷たい料理は風味を感じにくいため、ついつい濃い目に味付けしがちですが、出汁本来の味を楽しむためにも薄味を心がけましょう。後から調整することも可能です。
- 清涼感をプラス: 仕上げに少量の薄口醤油や塩で味を調えた後、冷やす前にほんの少しだけ酢や柑橘系の搾り汁(ゆずやレモンなど)を加えると、爽やかな風味が加わり、より夏らしくなります。加えすぎると酸味が立ちすぎるので、風味付け程度に。
- みりんの量: みりんの甘みは冷やすと強く感じやすいので、こちらも控えめに。砂糖で調整する場合は少量に留めます。
- 一番出汁を使う: 特に冷やしおでんでは、二番出汁よりも雑味の少ない一番出汁を使うのがおすすめです。

冷やしおでんに合う具材選びと下ごしらえ
冷やしおでんは、冬のおでんの定番具材も美味しいですが、夏ならではの具材を加えることで、より季節感が増し、ヘルシーレシピとしても魅力的になります。
定番ながら冷やして美味しい具材
- 大根: おでんの王様。下茹でして出汁でじっくり煮含め、冷やすことで味がよく染みます。面取りと隠し包丁は必須です。
- 玉子: ゆで卵は冷やしおでんの定番。味が染みやすく、たんぱく質も豊富です。
- こんにゃく・しらたき: 低カロリーで食物繊維たっぷり。アク抜きをしっかり行い、味が染み込みやすいように切り込みを入れたり結んだりします。こんにゃくに含まれる成分は腸内環境の改善にも役立つと言われており、ヘルシーレシピとしても最適です。
- ちくわ・はんぺん・さつま揚げなどの練り物: 練り物は種類が豊富で旨味が出やすいですが、冷やすと固くなったり油分が気になるものもあります。油抜きをしっかり行い、冷やしても美味しいものを選びましょう。特に、あっさりとした白はんぺんや、夏らしい風味の練り物もおすすめです。
- 厚揚げ・がんもどき: 油揚げ類は油抜きをしっかり行い、煮崩れしないように注意します。出汁をよく吸って美味しいですが、冷やすと少し油が気になる場合もあるため、使用量は調整しましょう。
- 昆布: 出汁を取った後の昆布や、結び昆布。食物繊維が豊富で、出汁の旨味も吸っています。
夏におすすめ! 冷やしおでんにぴったりの具材
- ミニトマト: 湯むきしてから加えると、出汁を吸ってジューシーで爽やか。彩りも豊かになります。
- オクラ: サッと茹でてから加えます。ネバネバ成分が夏バテ解消にも良いとされています。
- ヤングコーン: 缶詰やボイル済みのもの。プチプチとした食感が楽しいです。
- 冬瓜(とうがん): 夏が旬の野菜。体を冷やす効果があると言われています。皮をむいて種を取り、下茹でしてから使います。出汁をよく吸ってとろとろになります。
- ナス: 揚げナスや焼きナスを出汁に浸すのも美味しいです。色が変わりやすいので、下処理に注意が必要です。
- カニカマ(カニ風味かまぼこ): そのまま加えるだけで彩りも良く、手軽です。
- 鶏むね肉やささみ: ヘルシーなタンパク源。茹でてから加えても、出汁で一緒に煮込んでもOKです。パサつきやすいので、煮込みすぎに注意しましょう。

下ごしらえのポイント
具材によって適切な下ごしらえが必要です。特に冷やしおでんでは、冷やした時に固くなったり風味が落ちたりしないよう、丁寧な下ごしらえが重要です。
- 大根: 厚めに輪切りにし、面取りをして、米のとぎ汁で透明になるまで下茹でします。その後、水でよく洗い、えぐみを取ります。
- こんにゃく・しらたき: 茹でてアク抜きをし、必要に応じて切り込みを入れたり結んだりします。
- 練り物: 熱湯をかけて油抜きをします。これにより余分な油が落ち、出汁の味が染み込みやすくなります。
- 玉子: 固ゆで卵を作ります。殻を剥いておきます。
- 夏野菜: ミニトマトは湯むき、オクラや冬瓜は下茹でが必要です。
簡単! 冷やしおでんの作り方ステップ
冷やしおでんの作り方は、基本的なおでんの作り方と大きく変わりませんが、冷やす工程と味付けの調整がポイントになります。ここでは、ご家庭で簡単にできる作り方をご紹介します。このレシピは、簡単な食事としても、じっくりと伝統料理に取り組むステップとしても楽しめます。
材料:
- 上記「夏にぴったりの出汁の作り方」で用意した出汁
- お好みの具材(大根、玉子、こんにゃく、練り物、夏野菜など)
- 薄口醤油、みりん、塩:各適量
作り方:
- 具材の下ごしらえ: 各具材を上記「具材選びと下ごしらえ」を参考に丁寧に行います。
- 出汁の味付け: 鍋に取った出汁を温め、薄口醤油、みりん、塩で味を調えます。冷やした時に味が薄く感じやすいので、温かいうちに少しだけ「薄いかな?」と感じるくらいの味付けが目安です。甘みや塩分は控えめに。
- 具材を煮込む: 下ごしらえを終えた具材のうち、大根やこんにゃく、厚揚げなど、火の通りにくいものから鍋に入れます。沸騰したらアクを取り、弱火でじっくりと煮込みます。具材に味が染み込むまで、目安として30分~1時間程度煮込みます。練り物や玉子、夏野菜など、煮崩れしやすいものや火の通りが早いものは、煮込みの終盤に加えます。練り物は煮すぎると風味が飛んだり固くなったりするので、サッと煮る程度でOKです。
- 粗熱を取る: 全ての具材に火が通り、味が染み込んだら火を止めます。鍋ごと、または保存容器に移して粗熱を取ります。ここで蓋をしておくと、具材にさらに味が染み込みます。
- しっかりと冷やす: 粗熱が取れたら、冷蔵庫に移してキンと冷やします。最低でも3~4時間、できれば一晩置くと、味がしっかり馴染み、冷たさも十分になります。急いでいる場合は、鍋を氷水に浸けて冷やす方法もありますが、ゆっくり冷やす方が味が染み込みやすいです。
- 盛り付け: 冷蔵庫から取り出し、お好みの具材と澄んだ出汁を器に盛り付ければ完成です。お好みで薬味を添えましょう。
成功のコツ: 冷やしおでんの出汁は、濁らないように丁寧に取り、煮込みすぎないのがポイントです。特に練り物からの油分で濁りやすいので、油抜きは念入りに。また、具材は冷蔵庫で冷やす際に味がさらに染み込むので、煮込み時間は冬のおでんほど長くなくても大丈夫です。
アレンジと楽しみ方:薬味、具材、そしてお弁当に
冷やしおでんは、そのままでも美味しいですが、薬味を添えたり、変わった具材を試したり、お弁当に詰めたりと、様々な方法で楽しむことができます。これは単なる簡単な食事に留まらず、工夫次第でさらに多様な表情を見せる伝統料理の新しい形です。
おすすめの薬味
冷やしおでんの風味をさらに引き立てる薬味。
- 生姜のすりおろし: 爽やかな辛味がアクセントになり、体を温める効果も期待できます。
- みょうがの千切り: 独特の香りが冷たい出汁とよく合います。
- 大葉(青じそ)の千切り: 清涼感のある香りが食欲をそそります。
- ゆず胡椒: ピリッとした辛みとゆずの風味が大人の味を演出します。少量添えるのがおすすめです。
- わさび: おでんにわさび?と思うかもしれませんが、冷たい出汁には surprisingly よく合います。特に魚介系の練り物と相性が良いです。
- ねぎ(小ねぎ)の小口切り: 定番ですが、彩りも良く風味もアップします。
冷やしおでんの変わり種具材
上記で紹介した夏野菜以外にも、こんな具材も冷やしおでんに合います。
- アスパラガス: サッと茹でて加えると、シャキッとした食感が楽しめます。
- パプリカ: 彩りとして加えるのも良いでしょう。
- きのこ類(椎茸、エリンギなど): 出汁の旨味を吸って美味しくなります。煮すぎに注意。
- 揚げ出し豆腐: 温かい出汁で煮た後、粗熱を取って冷やします。出汁をたっぷり吸ってジューシーです。
冷やしおでんをお弁当に! お弁当アイデアとして
冷やしおでんは、まさにお弁当アイデアとしても非常に優れています。暑い季節に傷みにくい、汁気のあるおかずは重宝しますし、冷蔵庫から出してそのまま食べられる手軽さも魅力です。
- 詰め方のポイント: 汁漏れしないように、汁気の多い具材と少ない具材を分けて詰めたり、密閉できる容器を選んだりしましょう。出汁をゼラチンで固めて「ジュレ」のようにしてから詰めると、汁漏れの心配がなく、見た目もおしゃれになります。
- 相性の良いおかず: ご飯はもちろん、そうめんやうどんなどの麺類と組み合わせるのもおすすめです。唐揚げや卵焼きといった定番の弁当おかずとも意外と合います。
- 保冷対策: 夏場は必ず保冷剤と一緒に持ち運びましょう。

冷やしおでんの健康効果:ヘルシーレシピとしての側面
冷やしおでんは美味しいだけでなく、健康面でも優れたヘルシーレシピです。夏の疲労回復やダイエット中の方にもおすすめです。
- 低カロリー・低脂質: 揚げ物などが少なく、大根やこんにゃく、海藻類が中心のため、全体的にカロリーが控えめです。冷やしおでんの場合、出汁の油分も固まりやすく、気になる場合は取り除くことも可能です。
- 豊富な食物繊維: 大根、こんにゃく、昆布、きのこ類など、食物繊維が豊富な具材が多いです。食物繊維は腸内環境を整え、便秘解消や血糖値の上昇を緩やかにする効果が期待できます。
- 良質なたんぱく質: 玉子や練り物(種類による)は、良質なたんぱく源となります。筋肉の維持や夏バテ予防に重要です。
- 水分・ミネラル補給: 出汁から水分とミネラルを効率よく摂取できます。汗をかきやすい夏場には特に重要です。
- 消化が良い: じっくり煮込まれているため、具材が柔らかく消化の負担が少ないです。食欲が落ちやすい夏でも食べやすいのはこのためです。
このように、冷やしおでんは美味しく、簡単に作れて、さらに健康にも良いという、まさに理想的な簡単な食事と言えるでしょう。
冷やしおでんを美味しく仕上げるコツと注意点
冷やしおでんを最高の状態で楽しむために、いくつかのコツと注意点があります。
- 出汁は丁寧に、濁らせない: これが最も重要です。昆布は煮すぎない、かつお節は絞らない、練り物の油抜きをしっかり行うなど、澄んだ出汁を保つ努力をしましょう。
- 味付けは冷えてから調整: 冷やすと味が薄く感じやすい性質がありますが、だからといって熱いうちに濃くしすぎると、冷やした時に塩辛くなってしまいます。まずは薄味で煮て、冷やした後に味見をし、必要であれば少量ずつ調味料を足して調整するのが失敗しにくい方法です。
- 具材は完全に冷やしてから: 粗熱を取るだけでなく、冷蔵庫で芯までしっかりと冷やすことで、味が均一に馴染み、ひんやりとした食感になります。
- 油分の処理: 冷蔵庫で冷やすと、出汁の表面に固まった油が浮いてくることがあります。気になる場合は、スプーンなどで丁寧に取り除くと、よりあっさりとしてヘルシーになります。
- 保存期間: 冷蔵庫で2~3日程度は保存可能ですが、生ものに近い具材(練り物など)が多い場合は早めに食べきるのがおすすめです。清潔な容器に入れ、冷たい状態を保つことが重要です。
- 温め直さない: 冷やしおでんは冷たいまま楽しむ料理です。一度冷やしたものを温め直すと、風味が損なわれたり、具材の食感が悪くなったりすることがあります。

結論:夏の新たな伝統料理、冷やしおでんを食卓に
冬の定番であるおでんを、夏の暑い季節に清涼感あふれる「冷やしおでん」として楽しむ。これは、日本の伝統料理であるおでんが持つポテンシャルを最大限に引き出した、素晴らしいアイデアです。丁寧に取った出汁の繊細な味わいをダイレクトに感じられる冷やしおでんは、まさに夏の食卓にぴったりの簡単な食事であり、同時に奥深い和食の世界を垣間見せてくれます。
ヘルシーレシピとしても優れており、夏バテで食欲がない時でもつるりと食べられる口当たりの良さ、豊富な栄養素、そして体を内側から冷やしてくれる清涼感は、夏の健康維持にも貢献します。また、作り置きしておけば、忙しい日の簡単な食事として、あるいは彩り豊かなお弁当アイデアとして、様々なシーンで活躍してくれます。
「おでんは冬のもの」という固定観念を捨てて、ぜひ一度、この冷やしおでんを試してみてください。きっと、その驚きと美味しさに感動するはずです。出汁の文化を大切にする日本の伝統料理が、季節を超えて新しい形で受け継がれていく。冷やしおでんは、そんな素敵な可能性を感じさせてくれる一品です。
この夏は、キンと冷えた冷やしおでんで、日本の出汁の奥深い味わいを心ゆくまでお楽しみください。